究極のラーメン鉢誕生秘話

プロジェクトArita

プロジェクトAritaの誕生

プロジェクトチームの写真
若手窯元、陶交会のメンバーら

400年の伝統を受け継ぐ有田の陶工たちの胸に赤く燃える火がついた。
今だかつて「ラーメン鉢」という商品が市場にでたことはなかった。誰しも「どんぶり鉢」で代用し、何ら疑問を持たずに使っていた。そこに敢えて挑戦しようとする男たちが現れた。
2003年10月、有田商工会議所に1本の電話がかかってきた。「有田ならではのプロジェクトを立ち上げてもらえないか、その出来上がるまでの過程も『おーい、ニッポン』で放送したい」というNHKからの話がもちかけられた。
電話を受けた川原は、李荘窯の寺内に電話をし、NHKとの打ち合わせに同席を求めた。NHKとの会議に出席した寺内は、陶交会で参加することを提案した。陶交会とは有田の窯元の二世が組織する、次代を担うべき男たちの集まりである。
企画会議を進めていくうちに、次第にテーマが絞られ、「これまでにない、有田ならではのラーメン鉢の新スタンダードを作る」ことに決定。すぐさま陶交会のメンバーが召集され、14名の男たちがこの果敢な挑戦に賛同し、プロジェクトが誕生した。

究極のラーメン鉢を開発


14名の男たちは、それぞれが思い描くラーメン鉢を作り西有田町のラーメン屋に集まった。いざ持参した鉢にラーメンを盛ってもらったが、ほとんどの鉢がたっぷりとラーメンを盛ることができなかった。少ない中から条件に合う3点が選び出され、フォルムの最終調整を行って2種類の試作品ができた。
プロジェクトチームの写真
試作 1
プロジェクトチームの写真
試作 2









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日清食品インスタントラーメン発明記念館の職員に試作品を使ってもらう
2004年1月、試作品の評価をもらうためにプロジェクト代表の6名は、先ず大阪にある日清食品のインスタントラーメン発明記念館に向かった。差し出された鉢に記念館の女性職員たちがチキンラーメンを入れ、お湯を注ぎ込んだ。しかし、充分にお湯を注いでも麺を浸すまでにはいたらなかった。更に女性職員の口から出た言葉は男たちの自信を揺るがせた。
「熱くて持てない、それに大きすぎて持ちにくい」
翌日、男たちは東京へ発った。向かう先は日清食品本社。ここでもマーケティング担当者から家庭で使う視点からの問題点を指摘された。次に向かった横浜ラーメン博物館でも、更に追い討ちをかけられるように、「この麺鉢だと、スープ本来のおいしさが損なわれる」と言われ、男たちの自信は完全に砕かれた。

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新横浜ラーメン博物館岩本館長にも試作品の評価を聞く
佐賀に戻り、プロジェクトの男たちが召集された。席上、コンセプトの変更を余儀なくされた経緯が報告された。有田が作るならこうあるべきという思いが前面に出てしまい、国民食とまでいわれるインスタントラーメン、その中でもトップシェアを誇るチキンラーメンを家庭の主婦や子供が食べている姿が見えていなかった。激しい議論の末、「家庭で食べるラーメンのスタンダードとしてチキンラーメンは無視できない」という思いが男たちの胸に広がっていった。
最終コンセプトが決まった。「チキンラーメンがおいしく食べられる、小振りで使い勝手の良いラーメン鉢」。しかしこの後も議論は続いた。「何で一つの型にするんだ、自由でいいじゃないか」「細かいサイズばかり言わずに他にも考えられることがあるんじゃないか」「ラーメン鉢じゃなくて多用鉢でいいじゃないか」と男たちの思いは入り乱れたが、終いに一つにまとまった。それぞれの知恵が凝縮された一つの型に、男たちの得意とする絵付けをして市場に出すことが決まった。

TVに映し出された男たちの顔は緊張していた。小雪が舞う有田の泉山磁石場、そこに設けられた特設ステージに、出来上がったラーメン鉢を神輿に乗せ、神輿を担ぐ男たちは上がった。そこにはチキンラーメン発明記念館の女性たち、横浜ラーメン博物館のプロたちが審査員として座っていた。いよいよ審査、全員が合格のボタンを押した。会場となった泉山磁石場には男たちの歓声が響き渡った。そして、涙ぐむ男もいた。

こうして、今店頭には男たちの思いをこめたラーメン鉢が並んでいる。未知の市場に敢えて挑戦した男たちの胸に赤く燃える火に照らされて。

第2弾 それは究極のラーメン鉢に合うレンゲ


究極のラーメン鉢を開発している時から「次はレンゲだ」と、プロジェクトのメンバーの夢は広がっていた。李荘窯の寺内や陶悦窯の今村を中心に型の検討が始まった。こういうレンゲを作りたいという夢はあった。しかし、イメージしたものを作っても何かしら不都合が生じてきた。その都度、試作品は作り直された。また、技術的な問題も出てきた。それはそれぞれの窯での焼成の違いで、柄の変形が発生するという問題もあった。試行錯誤の末、やっとサンプルが完成したのが、究極のラーメン鉢完成から10ヶ月が経過した2004年12月の初めであった。

完成したレンゲは究極のラーメン鉢にフィットするように設計されている。その特徴を幾つか紹介すると、
  1. スープをすくう際にレンゲの匙部分のカーブが鉢の底のカーブとフィットしているので、滑らかにレンゲがすべり麺とスープを気持ちよくすくい上げてくれる。
  2. レンゲが滑ってスープの中に沈まないよう柄の裏に小さな突起があり、口縁部にかけられるようになっている。また、他のどんぶり鉢で使っても中に沈まない長さがある。
  3. 従来のレンゲは口につける匙の部分が分厚く違和感があり、スープなどの味を損ねかねない。この違和感をなくすために匙の部分は薄づくりになっている。
  4. レンゲをテーブルに置いても口につける匙の部分がテーブルに着かないようになっている。
  5. レンゲとしてだけではなく、スプーンとしても使える長さと形状になっている。
というふうに、随所に工夫が凝らされている。

サンプルが完成すると、「折角ラーメン鉢はみんなの技術を生かして、それぞれ絵付けしたのだから、レンゲもラーメン鉢の絵柄に合わせて全種類つくろう」と皆の気持ちも盛り上がった。出来上がったレンゲは究極のラーメン鉢と同じ絵付けがそれぞれに施され、カラフルであり、見ているだけでも楽しさが伝わってくる。

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